移植
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医療経済から移植医療のサステナビリティを考える
伊藤 孝司田倉 智之
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2023 年 58 巻 Supplement 号 p. s222_1

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抄録

 臓器移植は臓器提供、移植手術、術後管理と様々な行程があり、複雑に交絡している。今後に臓器提供が欧米並みに増加した場合には、現在のシステムでは成り立たなくなることは自明の理であり、患者が不利益を被ることが予想される。海外の報告では、移植医療は一般診療に比べて、医療経済性に優れていると推察される。一方、本邦においては、関わる研究は少なく、移植医療の医療経済学に関わるエビデンスの蓄積が望まれる。 本研究では、肝臓移植の請求構造の整理として「肝臓移植の手術に関わる診療請報酬求の構造」について実施した。肝臓移植の全体費用は、平均355,398±113,813点/件であった。なお、ドナー分類別の手術費用は、生体肝(近親)と脳死肝に比べて、生体肝(夫婦)が最も低くかった(286,149±28,593点/件,p<0.05)。今後、移植医療に対する社会経済的な投資が、適切に行われるかどうかの検討も必要である。 また、この結果を病院経営から解釈を行なう場合は、医療費原価と比較すること(原価率算定)が重要であった。また、疾患特性や施設特性等を背景とした変動要因の整理を行なうために、臨床指標も含めた多施設の研究が望まれた。  本研究では、移植医療の費用算定の在り方について、予備的な整理を行なった。その結果、移植医療の費用対効果の推移は、術後の時間経過とともに改善する傾向にあった。

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