移植
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当科における脳死単独小腸移植3例の経験
松本 匡永内田 康幸河野 雄紀梶原 啓資鳥井ケ原 幸博白井 剛栁 佑典松浦 俊治田尻 達郎
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s331_2

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抄録

本邦での小腸移植患者の原疾患の約4割が腸管運動機能障害であり、海外に比して多い。当科ではこれまでにHirschsprung病類縁疾患に対する脳死単独小腸移植を3例実施した。症例1:慢性特発性偽性腸閉塞(CIIPs)の29歳男性。長期静脈栄養の結果、カテーテル関連血流感染(CRBSI)を繰り返し、中心静脈ルートが枯渇したため、脳死小腸移植を施行した。術後native十二指腸の滞留により急性膵炎、経口摂取困難が続き、十二指腸グラフト小腸吻合術を追加した。移植後147日目に退院したが、5日後に急性拒絶を発症し、CMV感染も併発した。最終的にグラフト摘出まで施行したが移植後1年2か月で死亡した。症例2:CIIPsの36歳男性。頻回のCRBSIと中心静脈ルート枯渇のため、脳死小腸移植を施行した。術後、graft腸管に留置していた栄養チューブが胃に迷入し、栄養内服管理が困難となったため、腸瘻再造設を要した。移植後141日に退院。移植後2年が経過し、電解質補正は要するが、これまで拒絶反応はなく、stoma, device-freeとなっている。症例3:Hypoganglionosisの19歳女性。新生児期から腸管運動機能障害を認め、頻回のCRBSIと中心静脈ルート枯渇のため、脳死小腸移植を施行した。栄養摂取は全量経口で可能で術後76日目に退院。術後4ヶ月経過し、1度も拒絶所見は認めていない。各例native腸管の機能的差異から、消化管再建や栄養・薬剤投与ルートの確保に工夫が必要であった。比較検討して報告する。

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