移植
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生体吸収性デバイスによる血管床誘導先行皮下膵島移植法開発
江本 憲央穴澤 貴行出羽 彩Su Hang藤本 七恵井ノ口 健太山根 佳多田 誠一郎波多野 悦朗
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s313_1

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抄録

【目的】近年、より安全性が高いとされる皮下膵島移植法の開発が進められているが、血流と細胞生着の足場の欠如により移植細胞の生存率と機能が大幅に制限されることが欠点である。生体吸収性デバイスを用いて、移植膵島に血流と足場を提供する皮下移植部位を移植前に形成することが、課題解決に寄与するか否かについて検討した。

【方法】C57BL/6マウス皮下にbFGF16µg/cm2を担持させたコラーゲン含有生体吸収性デバイスを留置し血管床を誘導した。薬剤誘発糖尿病マウスに、デバイス留置期間を14日間、移植膵島数を200個として同系統の膵島を移植し移植成績を検討した。比較対照として、移植部位非形成マウスへの皮下移植、および経門脈移植を同数の膵島にて行った。

【結果】デバイスによる移植部位形成群では留置部に空間が形成され簡便な手技で移植可能であった。移植部位非形成皮下移植では、血糖値低下は得られなかった。移植部位形成群(n=15)では、移植後30日での血糖正常化率53%、60日で87%、100日で94%であり、血糖正常化までの平均値は33日 (15-73日)であった。移植後100日経過後にグラフト除去を行うと全例で血糖値再上昇を認めた。血糖正常化率は同数の経門脈膵島移植群と比較し遜色なかった。

【結語】皮下膵島移植において、足場を提供し移植前に血管床誘導を可能とする生体吸収性デバイスの有用性が示唆された。

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