移植
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ブタ膵島異種移植の実現に向けて
坂田 直昭吉松 軍平小玉 正太
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s310_2

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抄録

膵島移植は偶発ドナーに依存する治療であるため、供給が常時可能な代替ドナー源を確立することが求められている。ブタ膵島異種移植は古くから有望な代替治療と目されてきたが、遺伝子改変技術の進歩のもと、その実現性は現実味を帯びてきた。本発表では、我々のこれまでの研究成果に基づき、ブタ膵島異種移植の実現とその成功のために要求されることについて論ずる。異種移植の成立に免疫の制御は不可欠であるが、カプセル化技術は免疫制御に大きく貢献してきた。我々は以前、幼若ブタ膵島を、主成分をアルギニン酸とするマイクロカプセルで封入し、カプセル化した膵島10,000 IEQsを糖尿病マウスの腹腔内に異種移植する実験を行い、約60%のマウスの20日以上の血糖値の正常化と、抗炎症治療(抗TNF-α抗体)の追加による膵島生着の延長効果を確認した(Itoh T, et al. Xenotransplantation 2016)。また、高品質のブタ膵島を安定供給することは、免疫制御同様に検討されるべき案件と考える。われわれは、適切な膵臓消化下で確保された膵島は、14日程度の培養が可能であること、培養後であっても移植により糖尿病マウスの血糖正常化が得られることを確認している(投稿中)。しかしながら、ブタ膵島は極めて脆弱であり、容易に過消化となるため状態の良い膵島を確保することが難しい。ブタ膵島異種移植の実現と成功には、カプセル化技術に基づく炎症・免疫の制御、ブタ膵島の特性を理解した上での適切な膵島分離手技の確立が重要であると考えられる。

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