移植
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当科における肝小腸移植の3例について
岡本 竜弥岡島 英明山本 美紀上林 エレーナ幸江小川 絵里波多野 悦朗
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s217_1

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抄録

[緒言] 腸管不全関連肝障害(IFALD)を伴う小腸機能不全に対しては、肝小腸移植が適応となるが、本邦においては脳死ドナーからの肝小腸同時移植実施は現実的でなく、生体及び脳死ドナーからの異時性肝小腸移植が試みられている。当科におけるIFALDによる肝小腸移植の3例を提示し、今後の課題を検討する。[症例1] 1歳女児。父親及び伯母からの肝、小腸同時生体移植を施行。術後急性拒絶に対してOKT-3を投与後、PTLD(DLBCL)を発症し術後2ヶ月にて死亡。[症例2] 18歳男性。 17歳時に他医にて肝移植を受け、その9か月後に脳死小腸移植を施行。術後CMV腸炎及びアスペルギルス肺炎、FKによる腎機能障害を併発。栄養吸収不良による脂肪性肝炎/肝繊維化の進行あり、小腸移植後21カ月目に脳死肝再移植術を施行。その後も脂肪性肝炎が継続し、小腸移植後5年8カ月後に肝腎不全にて死亡。[症例3]1歳女児。生後7ヶ月時に肝移植を施行し、1歳4か月時に脳死小腸移植を施行。術後3ヶ月時にグラフト小腸に腫瘤形成ありPTLD(DLBCL)と診断。化学療法後にグラフト小腸の重症拒絶を来し術後7ヶ月時にグラフト小腸切除を施行。[考察] IFALDに肝移植を先行する事により、患児の生存期間向上が得られるが、小腸移植後は強力な免疫抑制療法のため、特に低年齢レシピエントにおいて感染症のコントロールが困難で満足な結果が得られていない。免疫抑制プロトコールの更なる改善とともに、脳死肝小腸同時移植がより実施可能な臓器分配のシステムが推進される事が望まれる。

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