移植
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臓器提供体制が不十分な新設の急性期病院で発生したポテンシャルドナーの1例
有嶋 拓郎日下 守若子 哲伊藤 信二大見 達夫稲葉 祐美濱口 奨吾高橋 久子佐藤 恵利菜加藤 真佑纐纈 一枝加藤 櫻子剣持 敬守瀬 善一
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s520

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抄録

【緒言】臓器提供体制が不十分な開院1年未満の急性期病院で、ポテンシャルドナーが発生し、病院の体制整備と臨床を同時並行で実施して提供に至った1例を経験した。臓器提供体制は完備していない状況であったが、病院内外の協力が得られたことで提供に至ったので報告する。【事例】50歳代、男性。2021年4月X日、右被殻出血で救急搬送され、緊急手術等の救命処置を実施した。X+1日には、臨床的脳死状態に陥った。X+2日、脳神経外科主治医の病状説明の時に臓器提供の可能性についての意思表示が父親よりあった。重要医療事故発生時と同等の連絡網で院内連絡を行った。同時に県の臓器移植コーディネーターに連絡をして協力を仰いだ。X+5日、X+6日の法的脳死判定を経て、X+8日に脳死下臓器摘出を行った。【考察】コロナ禍の状況で、病院内外の組織を同時並行的に運用することは、さらなる業務負荷が生じることが危惧された。既存の方針決定に必要な会議や診療部門、検査部門を時間軸に合わせて最小限の修正で間に合うように再編した。臓器摘出(腎)において当院の医師も協力して、臓器移植実施施設の負担軽減も図れた。【結語】救命医療、脳死判定、臓器摘出の各時相において、既存の組織体系や診療体制の人的ネットワークが存在し、機能したことにより、通常の診療と並行して脳死下臓器提供を完遂できた。

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