2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 343_3
【背景】我が国の脳死移植では, 長期待機が腎機能悪化を招くことはしばしばであり, 腎機能不良例での術後体液管理が肝要となる. 我々は, 脳死肝移植術後体液管理にトルバプタンを使用しているので, その成績を報告する.【方法】当施設で施行した脳死肝移植36例について, eGFR別(不良群: <60,中間群: 60〜90, 良好群: >90)にトルバプタンの使用状況, 成績を調査した.【結果】トルバプタン使用例は24例(67%)で, 不良群10例中10例, 中間群11例中9例, 良好群15例中5例と, 不良群でのトルバプタン使用が有意に多かった. 不良群では, 中間+良好群に比し,利尿剤(フロセミド div, hANP div)使用量が有意に多い, 術後3病日までの尿量が有意に少ない, 中心静脈留置期間が有意に長い, ICU在室,ドレーン留置, 在院の各期間が長期に渡るなど管理に難渋する傾向を認めた. 一方, 不良群の6か月生存率は100%, 永久透析導入症例は認めず, トルバプタンに直接起因すると思われる有害事象も認めなかった. 不良群における術後28日目のeGFR中央値は61.0と, 術前(52.5)よりも改善傾向を示した.【結語】 腎機能不良の脳死肝移植術後においても,トルバプタンは体液管理の一助となる可能性が示唆された. MELD制導入下での有用性が注目される.