移植
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当科におけるアルコール性肝硬変に対する肝移植の現状
井出 隆太大平 真裕橋本 昌和谷峰 直樹黒田 慎太郎田原 裕之井手 健太郎小林 剛田中 友加大段 秀樹
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2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 277_1

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抄録

アルコール性非代償性肝硬変(ALC)患者に対する肝移植術は、術後の再飲酒によりグラフトロスや生存率の低下が問題となる。以前当科では肝移植後のアルコール摂取に関するアンケート調査を行ったところ、移植後の再飲酒は25/99例(25.3%)、ALCでは4/11例に認め、The Alcohol Use Disorders Identification Test-Consumption(AUDIT-C) scoreの高値と喫煙が、再飲酒の独立した危険因子であると報告した。今回我々は、ALC患者に対する肝移植の現状について報告する。対象は2003年から2019年までの肝移植症例253例で、アルコール性非代償性肝硬変(ALC群)34例、その他の非代償性肝硬変(non-ALC群)219例で検討を行った。2群間で患者背景には有意差はなく、手術因子ではALD群で出血量に有意差を認めるも、その他に有意差を認めなかった。長期成績においても差は認めなかった。ALC患者の術後再飲酒は6例(18%)に認めた。再飲酒群6例、非再飲酒群28例を比較したところ、患者背景、手術因子、術後成績、生存率とも有意差は認めず、良好な結果であった。当科では精神科、移植コーディネーターによる精神的なケアを行い、多職種連携の包括的なフォロー体制により、断酒の継続、再飲酒防止に努めている。

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