2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 255_1
緒言: 肝腎症候群(HRS)は末期肝硬変に合併する致死的病態であり、その肝移植治療成績は不良とされる。対象: 当科の成人初回生体肝移植437例(2005~2016)をHRS合併群と非合併群に分け、患者生存、移植後腎機能につき比較。また①腹水ドレナージ、②アルブミン補填、③DOA/NAD/VP(ADH)による血圧/腹腔内血流の是正、④トルバプタン等による利尿、から成る移植前治療を施した5例の成績を併せ検討。結果: HRS合併は1型17例、2型14例の31例(7.1%)。HRS群でMELD/CPT共に高く(P<0.001)、在院期間が長く(P=0.002)、在院死亡率が高かった(P=0.027)。1/3/5年生存率は65.0/60.0/60.0% vs. 83.3/78.9/76.8% (P =0.042)とHRS群で有意に不良。腎機能は肝移植後早期に改善(P =0.011)を認めたものの、移植2年後でも非合併群より不良であった(P <0.005)。術前治療(2-8週)を施行した5例では、全例で腎機能は劇的に回復、正常化し(P <0.01)、患者生存100%、移植2年後の腎機能も非合併群と同等であった。結論: 肝腎症候群は成人生体肝移植予後を有意に悪化させるが、”待機的な”生体肝移植だからこそ可能な術前治療がある。