日本外傷学会雑誌
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症例報告
併存する頭蓋内出血により早期の抗血栓療法を施行できず, 両側椎骨動脈損傷後の小脳梗塞を回避し得なかった一例
出口 亮内田 健一郎栗正 誠也脇田 史明羽川 直宏野田 智宏西村 哲郎溝端 康光
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2022 年 36 巻 3 号 p. 291-296

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抄録

 患者は72歳の男性. 4m下の道路に墜落し, 鈍的頸部外傷を受傷した. 頸髄損傷に加えて第6頸椎レベルでの右椎骨動脈閉塞と左椎骨動脈損傷を認めたが, 併存する頭部外傷により抗血栓療法の早期開始は見送られた. 第6病日より抗凝固療法を開始したが, 第19病日の頭部MRI検査で左出血性小脳梗塞および左椎骨動脈閉塞を認めた.

 椎骨動脈損傷の治療は早期の抗血栓療法が中心となるが, 他の併存する外傷のために抗血栓療法を導入できない時期には, 後方循環の脳梗塞を回避するため早期のコイル塞栓術の検討も必要と思われた. また抗血栓療法の導入に併せ少なくとも7~10日は経時的な画像検査を行い, 損傷血管の血流について評価する必要があると考えられた.

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© 2022 一般社団法人 日本外傷学会
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