2022 年 61 巻 4 号 p. 341-350
紙・パルプ産業はCO2を多排出な産業分野の一つであり,化石燃料への依存度が高く,ネットゼロに向けた移行は不可欠である.一方でプラ新法施行によりプラスチック素材の紙代替化―特に包装用途向けバリア紙は各社とも力を入れている.
循環型経済の概念では,「資源循環を推進し,廃棄物を出さない」ことが主軸だが,それらは同時に「未利用資源の有効活用」でもある.事例では卵殻紙をブランド化したCaMISHELL®や“植物由来の次世代素材“としてナノセルロースを紹介する.
製紙産業における炭素中立の実現には,燃料転換が鍵となり,新たな革新的技術が注目されている.早期実現は難しく,その移行期間においては,木質資源から化学製品を製造する「バイオリファイナリー」技術を用いた炭素中立な環境対応素材を提供することで,社会全体のCO2削減に貢献することが大切である.