環境科学会誌
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一般論文
物質管理の基本方策の類型化とその特徴把握(その2)
-チェックゲート管理・情報管理・資源確保の特徴-
田崎 智宏石塚 隆記滝上 英孝
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2012 年 25 巻 4 号 p. 280-295

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抄録

近年,化学物質管理の強化と併行して,リサイクル製品の安全性管理など,資源循環における物質管理の必要性が高まっており,物質の資源性と有害性の両面をふまえた包括的な物質管理方策が求められている。本報では,既存の物質管理に関連する44法制度等における829の物質管理規定を類型化して,物質管理には①曝露・被害防止,②フローのクローズド化,③チェックゲート管理,④情報管理(情報伝達とトレーサビリティ),⑤資源確保・利用,⑥管理体制の整備の6種類の基本方策があるとした前報の知見をふまえ,このうち③④⑤の基本管理方策の特徴や構成要素などを詳細に考察した(前報では上記以外の①②⑥の詳細な考察を行った)。
チェックゲート管理では物質特性,取扱い,情報に関するチェック項目が設定されていることを確認する一方で,静脈側におけるチェックゲート管理の適用性は比較的低く,その他の物質管理方策で補完される必要があると考えられた。情報伝達による物質管理は,促進行動の実施者に判断の自由度を与えてよい,もしくは自由度がある方が好ましい場合に適用されるべきと考えられ,ハイリスク物質等にこれのみを適用すべきではないと考えられた。社会的な判断に委ねながらミドルリスク物質等を管理していく場合に適用性が高いと考えられる。物質管理におけるトレーサビリティは,その目的により,価値付加型トレーサビリティと損失回避型トレーサビリティの2種類に大別できた。資源に関連する物質管理規定は,その他の基本管理方策に位置付けられるものも多く,資源確保・利用に特徴的な物質管理としては,資源の権利確定,資源の探索および確保,資源採取量の制限,リサイクルの促進,資源備蓄量の確保,物質使用の合理化の6つがあった。有害化学物質管理に適用されてきた情報伝達の手段が資源確保・利用にも採用されつつあり,物質管理方策の適用が拡大してきていると考えられた。

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© 2012 社団法人 環境科学会
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