耳鼻と臨床
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前庭機能の加齢変化
武田 憲昭佐藤 信次肥塚 泉林 治博荻野 仁松永 亨
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1993 年 39 巻 5Supplement2 号 p. 750-756

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抄録

加齢にともなう平衡機能の変化を調べる目的で, まず回転検査による前庭-動眼反射の利得を高齢者群と若年者群で比較したが差は認められなかつた. 次に, pseudorandom acceleration回転刺激中の回転速度の変化の認知率を検討したところ, 高齢者群では著明に低下していた. さらに, 中心性および偏中心性回転刺激において被検者に暗算を負荷した場合と地上の想定指標を固視するように指示した場合で前庭-動眼反射の利得を比較した. その結果, 指標を想定することによる前庭-動眼反射の利得の増加は高齢者群で劣つていた. 以上の結果から加齢による反射レベルの機能低下はほとんど認められず, 高齢者の平衡障害は高次中枢における前庭情報の求心性処理機能の低下や, 高次中枢が空間認知に基づいて前庭-動眼反射を調節する遠心性制御機構の異常に基づくものと推定した.

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