耳鼻と臨床
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原著
物性の違いとリクライニング位による嚥下動態の検討
山口 優実梅崎 俊郎宮地 英彰安達 一雄菊池 良和片岡 和子小宗 静男
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2010 年 56 巻 Suppl.2 号 p. S133-S137

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抄録

摂食・嚥下を改善すると考えられている代償方法の一つとしてリクライニング位がある。リクライニング位では気道と食道の解剖学的位置関係から誤嚥が起こりにくくなり、嚥下反射遅延患者においても有効であると考えられている。このことから多くの嚥下障害患者に対して用いられているが、食塊の流入に対する嚥下反射の遅れを計測し有効性を検討した報告はなく、その有効性は十分に解明されていない。そこで、喉頭挙上遅延時間 (laryngeal elevation delay time : LEDT) を用い、リクライニング位の有効性を検討した。その結果、液体嚥下時に LEDT は有意に延長した。誤嚥量が増加した症例もあったことから、流入速度の速い、つまり粘性の低い物性のものをリクライニング位で嚥下する際、咽頭期嚥下惹起が遅延する可能性が示唆された。その傾向は咽頭期嚥下の惹起が不良な症例ほど顕著であり、リクライニング位ではさらに誤嚥のリスクが高まり注意が必要であると考えられた。一方、ゼリーのような有形物の嚥下では、送り込み障害がある例では咽頭への送り込みがスムーズとなる。適度なリクライニング位は流入速度の遅い物性のものを嚥下する場合に有効である可能性が示唆された。

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© 2010 耳鼻と臨床会
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