2009 年 64 巻 10 号 p. 742-751
気相における"一回衝突の条件下"での超低エネルギー電子と分子の散乱に関する解説を行う.まず,μeV〜数eVのエネルギー領域の高分解能の研究に応用されているレーザーによる光電子を使った電子付着の手法について述べる.電子付着断面積(SF_6^-/SF_6とCl^-/Cl_2)のしきい値近傍の振舞いが解明され振動励起しきい値に発現するFeshbach共鳴構造が観測できる.放射光による光電離を電子源とする冷たい電子のビーム衝突実験法と10〜200meV領域での結果を述べる.極性/無極性分子をみると,電子衝突エネルギーの減少に伴いvirtual stateに起因する強調が無極性分子の衝突断面積にも現れる.最後に10eV以下での高分解能電子分光および熱励起標的分子についても最近の実験結果に触れる.