食品高圧加工について,その特徴を解説しつつ,基礎および応用に関する取り組みについて概説した.基礎的視点からは,系統的理解が進んでいなかった澱粉の圧力糊化について,糊化および老化の有無を明確に示す状態図を作成し,その理解を進めた.また,微生物の高圧不活性化,とくに細菌不活性化に及ぼす高圧処理の影響を調べ,高圧殺菌の効用と限界とについての知見を拡げた.さらに,不十分な圧力での高圧処理後に残存しうる損傷菌について,保存中の回復挙動を保存温度の視点から精査し,損傷菌の検出時には,培養温度,培地組成に注意すべきことを提示した.応用的視点からは,ものづくりに役立つ技術として,中高圧処理を活用したかぶら寿しの促成製造法ならびに脱気中温中高圧処理による高圧加工果実コンポート製造法を提示した.