大気環境学会誌
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都市・広域大気汚染の生成機構解明に関する研究
若松 伸司
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2001 年 36 巻 3 号 p. 125-136

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抄録

1970年から2000年の約30年間にわたる著者等の大気汚染立体分布観測やモデル解析研究を中心に, 都市・広域大気汚染に関する研究の成果と現状をとりまとめた。関東地域での観測により, 気圧傾度が弱い時には海陸風循環により日中は光化学大気汚染気塊が内陸地域に輸送され, これが夜間には陸風により再び海方向に戻される事, 日中は混合層が発達するので高濃度は上空にまで拡がること, 一方, 夜間には上空に日中に生成した二次汚染物質が残り, これが翌日の日中には混合層に取り込まれること等が解明された。また, 山岳地域から大平洋上に至る更に大きなスケールの汚染の輸送があることも分かった。九州北部地域での観測により成層圏から沈降するオゾン, 大陸方面からの大気汚染流入, 地域で発生する大気汚染物質, 火山から排出物などが複合して影響を及ぼすことが分かった。関西地域での観測や数値モデルを使った研究により, 春季における二酸化窒素汚染の発生源としては大阪地域からの寄与が大きいことや, バックグランドオゾンとの反応による酸化の割合が大きいことが分かった。トレンド解析とモデル研究により関東, 関西両地域において内陸地域において日最高濃度が出現する傾向が年々増加する傾向にあり, 大気汚染の広域化と均質化が進行していることが分かった。

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