大気環境学会誌
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総説
長距離越境大気汚染の解明を目指した航空機および地上観測
畠山 史郎
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2012 年 47 巻 3 号 p. 111-118

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抄録

中国本土上空における大気汚染物質の航空機観測と、沖縄の辺戸岬に新設された長距離越境大気汚染物質観測のためのステーション(辺戸岬大気・エアロゾル観測ステーション;CHAAMS)における地上観測について総説した。中国本土上空で捕集されたエアロゾルは予期に反して充分中和されていた。中国の西部地域では硫酸塩がアンモニア塩に比べて幾分過剰に存在するが、東部地域ではアンモニウム塩の方が硫酸塩よりも過剰に存在した。これは中国東部地域においてはSO2の放出量よりもアンモニアガスの放出量の方が多いからであると推測された。また、沖縄辺戸岬で捕集されたエアロゾル中の硝酸塩は微小粒子よりも粗大粒子に多く含まれていた。これは硝酸塩の大部分が微小粒子に含まれている中国の観測結果とは大きく異なっている。最も重要な原因は硝酸アンモニウムの熱的不安定性である。中国において微小粒子として生成した硝酸アンモニウムは長距離輸送の途上で熱分解し、硝酸ガスとアンモニアガスになる。その後、硝酸ガスが周辺に存在する海塩や土壌粒子のような粗大粒子に吸着されたものと考えられる。

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© 2012 社団法人 大気環境学会
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