2017 年 27 巻 1 号 p. 31-36
2015年に日本耳科学会、日本小児耳鼻咽喉科学会によって「小児滲出性中耳炎(OME)診療ガイドライン2015年版(初版)」が発刊された。欧米とは異なり、本邦ガイドラインのコンセプトは、中耳貯留液や鼓膜の病的変化などのOMEそのものへの対応だけではなく、その遷延化因子ともなりうる周辺器官の病変に対する治療を積極的に行うことを推奨するものである。しかし、周囲臓器に細菌感染症を伴わない場合には、OMEの治療としての抗菌薬使用はすべきではない。3か月以上改善しない両側のOME症例で明らかな聴力障害を示す場合や、鼓膜の病的変化が出現した場合には、鼓膜換気チューブ留置術を行うべきであり、難聴の程度が軽度であっても治療の選択肢として検討すべきである。
ガイドラインで示された指針(推奨)は、個々の症例における法的根拠とはならないことが原則であり、ガイドラインはあくまで診療を支援するものである。