2015 年 25 巻 3 号 p. 302-307
2004年秋から1年3ヶ月間、私は欧州3ヶ国と米国で様々な聴神経腫瘍手術を学ぶ機会に恵まれた。最初に渡ったフランス、マルセイユ大学で、私の生涯の恩師となるジャック・マニアン先生に出会った。この恩人にお礼がしたいという気持ちが側頭骨頭蓋底外科医を目指す大きな原動力となった。志をもって帰国し、学んだ全てを実践しようとしたが、私の前には大きな壁が幾重にも立ちはだかった。あれから10年間、茨の道の連続だったが、幸いにも国内外の多くの指導者と仲間に支えられ今日に至っている。側頭骨頭蓋底外科医となることは何も特別なことではない。しかしながら、多くの知識と技術を得る努力とその決意が必要である。側頭骨頭蓋底外科は耳科と脳神経外科との境界領域であり、今後は両科によるチーム手術が主流となっていくに違いない。時代のテーマは聴覚再獲得 (再生) であり、この領域での耳科医、神経耳科手術医の存在意義は必ずや大きくなることであろう。