Otology Japan
Online ISSN : 1884-1457
Print ISSN : 0917-2025
ISSN-L : 0917-2025
原著論文
顔面神経麻痺と肥厚性硬膜炎を合併したMPO-ANCA陽性の難治性中耳炎の1例
大田 重人我那覇 章鈴木 幹男
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 21 巻 5 号 p. 800-807

詳細
抄録

難治性中耳炎の経過中に、顔面神経麻痺と肥厚性硬膜炎を合併したMPO-ANCA陽性症例を経験した。症例は74歳女性で、右滲出性中耳炎にて鼓膜換気チューブ留置されたが、骨導閾値上昇したため当科紹介となった。細菌性内耳炎の診断で、抗生剤とステロイド点滴を行った。血液検査ではPR3-ANCA陰性、MPO-ANCA陽性であった。ステロイド内服継続して通院中に、右顔面神経麻痺が出現し、ステロイドミニパルスを行った。乳突削開術での病理検査は、非特異的炎症性肉芽であった。退院して、ステロイド維持内服していたが、多発神経症状が出現し、MRIで肥厚性硬膜炎を認めた。ステロイドパルスと免疫抑制剤投与を開始し、症状は改善した。MPO-ANCAのみ陽性で、病理組織学的検査でも特異的所見が得られない場合は、確定診断に苦慮する。Wegener肉芽腫症を含めたANCA関連血管炎症候群として早期に治療を開始することが必要と考えた。

著者関連情報
© 2011 日本耳科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top