心臓
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第16回 体表心臓微小電位研究会 シンポジウム T波解析と不整脈原生: From simulation practice Microvolt T wave alternansが反映する心室性不整脈発生基質
コンピュータシミュレーションによる基礎的検討
芦原 貴司八尾 武憲伊藤 誠堀江 稔難波 経豊原口 亮中沢 一雄池田 隆徳
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2007 年 39 巻 Supplement1 号 p. 14-19

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抄録

巨視的なT wave alternans(TWA)は致死性の心室性不整脈の予兆として知られる.一方で,最近,微視的なmicrovolt T wave altemans(MTWA)が心臓突然死につながる心室性不整脈の非侵襲的予知指標として注目されるようになった.TWAの成因としては活動電位持続時間(APD)の回復曲線にもとつくalternansや,不均質性にもとづく興奮波の分裂や回り込みが考えられているが,MTWAの成因については明らかでない.本研究では,コンピュータシミュレーションによりTWAとMTWAを再現し,MTWAの成因とそれが反映する不整脈発生基質について検討した.ヒト心室筋活動電位モデルで1-2次元の正常心筋モデルと,種々のイオンチャネルやgap結合のパラメータを変化させた異常心筋モデルを構成し,計算で描いた心電図からTWAとMTWAを検出した.正常心筋モデルでTWAは再現されたが,MTWAは陽性基準を満たさなかった.異常心筋モデルではMTWAが陽性となる例が存在したが,異常の種類によって,APD回復曲線の急峻化を伴うもの,APD回復曲線の平坦化を伴うもの,興奮伝播異常を伴うものの3つに分類された.MTWA陽性例では,心電図上のみならず膜電位やCa transientの分布マップ上でも,変化が目視では認識できなかった.MTWAは心室性不整脈の発生基質となりうる心筋異常を反映するが,TWAとは種々の点で異なった性質を有しており,MTWAはTWAの延長線上にあるものではないことが推察される.

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© 公益財団法人 日本心臓財団
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