心臓
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症例 回復期に一過性の好酸球増多を認めた急性心膜心筋炎の1例
畑 弘志丸岡 雄二山田 賢典浜中 保男
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1999 年 31 巻 4 号 p. 241-247

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抄録

急性ウイルス性心膜心筋炎を発症し,回復期に一過性の好酸球増多を認め,良好な経過をたどった症例を経験した.過去の好酸球性心筋炎の症例と比較して考察を加え報告する.
症例は20歳,男性.咽頭痛,鼻水等の上気道炎症状に続き,胸腹部痛,起坐呼吸を主訴に入院した.身体所見では圧痛を伴う著明な肝腫大を認めた.胸腹部CTにて肝脾腫,胸腹水を認めた.胸写所見上軽度の肺うっ血を,心電図所見上低電位・ST上昇・異常Q波を,心エコー図所見上心筋のび漫性壁運動低下と心嚢液貯留を認め,急性心膜心筋炎による両心不全と診断した.フロセミド,ドーパミン,ドブタミンの投与により,心不全は徐々に軽快した.入院初日,軽度の好酸球増多を認め,第2病日目には軽快したが,その後著明な好酸球増多が出現し,第5病日目に最高値(6681/mm3)となった.骨髄像で異型性はなく,各種血清学的寄生虫抗体価はすべて陰性であり,好酸球増多の原因は不明であった.好酸球増多および心エコー図,心電図の異常所見は約4週間後に自然軽快した.一過性の好酸球増多をきたし良好な経過をたどった急性心膜心筋炎症例は比較的まれで,我々が調べた限り過去に7例しか報告されていない.本症例は他症例と異なり,血清ウイルス抗体価の有意な変動を認めた.急性心膜心筋炎の原因としてウイルス感染が示唆され,心筋炎が好酸球増多に先行してみられたことより,心筋でのウイルス感染に反応性に好酸球増多が生じたことが推定された.

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