2004 年 46 巻 9 号 p. 2101-2106
症例は59歳男性.自殺企図にて36%濃塩酸を飲用.入院当日の上部消化管内視鏡検査では,食道と胃の粘膜は黒色に変化し,胃内には潰瘍を認め,塩酸による腐食性上部消化管傷害と診断した.経過中,食道狭窄を生じ,バルーン拡張術にて狭窄は改善した.しかし,食道,胃粘膜の治癒傾向得られず,幽門狭窄を生じたため,第77病日,喉頭及び食道,胃全摘術,胸骨後咽頭結腸吻合術を施行した.術後経過は良好であり,術後34日目に退院した.内視鏡により,急性壊死期,潰瘍・肉芽形成期,瘢痕狭窄期の上部消化管傷害を観察でき,特徴的所見を認めたため報告する.