日米における内視鏡診療において病理診断や診断の定義に相違があることは知られている.生検法や治療法が日米で異なる理由としては,早期消化管癌を内視鏡で診断し局所治療で制御する概念の本邦と,癌を発癌素地として考えランダム生検後に広範囲へ治療を行う概念のアメリカの相違が一因と思われる.ESDの対象疾患としては日本では食道扁平上皮癌やヘリコバクターピロリ感染を基とした腸上皮化成由来の分化型胃癌の比率が高いのに対し,アメリカではBarrett食道由来の食道腺癌やヘリコバクターピロリ非感染胃の胃癌の比率が高く,また最近sessile serrated polyp(SSP)も多く発見・治療されている.
ESDを取り巻く環境因子としては,本邦での内視鏡医による麻酔に対して,アメリカでは麻酔医や麻酔看護師によるサポートが可能である点が大きく異なっている.その他,健康保険や入院に対する考え方の相違も大きく,アメリカでESDを展開する際の注意すべき点である.
今後グローバル化が進むにつれ,さらにESDを含む本邦の内視鏡診療が世界中に普及することが望まれる.