日本消化器内視鏡学会雑誌
Online ISSN : 1884-5738
Print ISSN : 0387-1207
ISSN-L : 0387-1207
原著
プロトンポンプ阻害薬長期投与中に増大した胃底腺ポリープの検討
菅原 通子今井 幸紀齊藤 詠子藤盛 健二新井 晋稲生 実枝中山 伸朗名越 澄子伴 慎一持田 智
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2009 年 51 巻 8 号 p. 1686-1691

詳細
抄録

【目的と方法】プロトンポンプ阻害薬(Proton Pump Inhibitor:PPI)の長期投与によって胃底腺ポリープが増大することが報告されている.その病態や機序を明らかにするため,PPI長期投与中に胃底腺ポリープが増大した13症例(男3例,女10例,年齢(平均±2SE)70.5±6.3歳)の臨床的,組織学的特徴を検討した.【結果】ポリープ増大が確認されるまでの内服期間(平均±2SE)は29.9±8.3カ月であり,ポリープの径は投与前5mm未満であったが,投与中に5~15mmに増大した.何れも内視鏡所見では水腫様外観を呈していた.Helicobacter pyloriH. pylori)感染は全例で認められなかった.血清ガストリン値は8例で測定され,うち4例で高値を示した.内視鏡的粘膜切除術(Endoscopic Mucosal Resection:EMR)施行例では,ポリープ増大前の生検組織と比較して,胃底腺ポリープに認められる拡張腺管の拡張の程度が増し,拡張腺管の数も増加していた.内分泌細胞の微小胞巣やカルチノイド腫瘍の所見は認められなかった.【結論】胃底腺ポリープの増大は,H. pylori陰性例にPPIを長期投与することによってPPIの種類に関係なく生じる.胃底腺ポリープ増大の機序のひとつとして,胃底腺ポリープに認められる拡張腺管の拡張の程度の増加,拡張腺管の数の増加の誘発が考えられた.

著者関連情報
© 2009 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
前の記事 次の記事
feedback
Top