日本健康教育学会誌
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総説
世界におけるセーフコミュニティの歴史と展開
白石 陽子
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2010 年 18 巻 1 号 p. 42-50

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抄録

本稿では,世界レベルで急速に普及している,傷害予防を通して安全なまちをめざす「セーフコミュニティ(SC)」について理解を深めるために,その取り組みの誕生と世界の多様なコミュニティで導入されてきた経緯をたどった.そのうえで,現在の世界レベルでの展開の状況を整理し,SCが多様なコミュニティで導入される要因について考察を行った.研究方法としては,SC活動のこれまでの経緯についてはWHOおよび関連機関などによる報告書などの文献調査を行った.また,現在のSC活動の展開の状況についてはSC認証申請書から得た情報を分析した.その結果,明らかになったのは,SCの取り組みが誕生した背景には,新公衆衛生運動(ニューパブリックヘルス)の潮流の中でWHOが傷害を健康課題として認識し,その予防に着手した経緯がある.WHOは,傷害予防をコミュニティのレベルで推進するために,当時すでに傷害予防プログラムの実績を有していたスウェーデンのカロリンスカ研究所(医科大学)との協働によりSC活動モデルを構築した.コミュニティは,このモデルを導入することによって,環境や社会状況,安全課題が異なっていても,それぞれが有する社会資源を活用し,地域の実情にみあった方法により安全なまちづくりを推進するフレームワークを得ることができる.このSCモデルが包括的,体系的な安全向上のアプローチでありながら地域の実情に見合った取り組みを可能とする点が,先進国や発展途上国を問わず多くのコミュニティの注目を集め,また我が国においても新たな安全向上のアプローチとして関心が高まっている所以である.

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