老年歯科医学
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原著
口腔内ブラッシングによる大脳前頭前野の活性変化についての検討
―近赤外線分光法を用いた機能局在の解析―
力丸 哲也大倉 義文栢 豪洋
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2015 年 29 巻 4 号 p. 329-339

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抄録

近年,高齢者における介護予防やリハビリテーションの手段として,口腔ケアは注目されている。これまでの研究で口腔内ブラッシング等の口腔ケアと大脳活性化との関連が報告されてきたが,口腔内ブラッシング刺激と大脳前頭前野の活性化との関連は不明瞭な点も多い。本研究では,成人若年男性 13 名を対象に口腔内ブラッシング刺激による大脳前頭前野の活性変化について非侵襲的な脳機能イメージングである近赤外線分光法を用い検討した。 口腔内ブラッシングの一つである歯肉部のブラッシング(歯肉マッサージ)は,歯面のブラッシングと同様に,大脳前頭前野の血流増加を示した。特に,前頭前野の機能局在部位である左前頭前野の腹外側(VL)領域と学習系課題遂行時に活性化される左背側前頭皮質領域において有意な血流増加が認められた。しかしながら,その血流増加作用は,対照課題として用いた学習系課題による血流増加作用に比べ低かった。 歯面ブラッシングや歯肉マッサージの刺激は,学習系課題と比べ作用は小さいものの,機能局在部位である左前頭前野腹外側(VL)領域と左背側前頭皮質領域の血流増加作用を示した。これらの機能局在部位における血流増加は同領域の神経活動の活性化を示しており,口腔内ブラッシング刺激が大脳前頭前野の活性変化を介して介護予防や認知機能に対するリハビリテーションの手段として活用できる可能性が示唆された。

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© 2015 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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