1988 年 20 巻 1 号 p. 23-27
独歩開始遅延を主訴に来院した男児において, 頭部CTを施行したところ, 偶然脳内石灰化が発見された. 本患児は種々の検査により腎性尿崩症と診断された. 脳内石灰化は両側基底核 (被殻, 淡蒼球) と前頭葉, 後頭葉および頭頂葉皮質にほぼ左右対称性にみられ, 皮質のものは灰白質と白質の境界に存在していた.
脳内石灰化の機序は不明であるが, 原疾患に基づ<高Na, 高浸透圧血症による血管壁の障害が重要であると考えられた. なお, 本症例ではその後の精神運動発達は正常であり, 脳内石灰化による局所症状は認められなかったが, 長期予後からみると, 本症に脳内石灰化を伴っている例では, 早期からのより厳重な管理が必要であると考えられた.