日本化学療法学会雑誌
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Teicoplaninが奏功した冠状動脈バイパス術後に発症したmethicillin-resistant Staphylococcus aums縦隔炎の1症例
辻 泰弘佐道 紳一神村 英利谷口 真一郎
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2007 年 55 巻 3 号 p. 230-234

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抄録

症例は78歳女性. 冠動脈三枝すべてに高度狭窄を有する重症三枝病変のためcoronary artery bypassgrafting施行. 術後34日目に縦隔炎と診断され, 縦隔の排液からKlebsiella pmmoniaeが検出された. このため, cefozopran (CZOP) を投与したが, 術後39日目にmethicillin-resistantst Staphylococcus aureus (MRSA) に菌交代した. その治療には腎機能障害を考慮し, arbekacinとvancomycinを使用せずteicoplanin (TEIC) 単剤投与を選択した. また, 添付文書どおりの投与量では重篤なMRSA縦隔炎には効果が乏しいと判断し, 投与初期から薬物血中濃度モニタリング (TDM) を積極的に実施し, TEICの血中トラフ濃度を投与終了まで≧20μg/mL (400→200mg/日) に維持することに努めた.その結果, 臨床症状・検査成績は改善し, MRSAも消失したため, 投与50日目で投与中止した.
TEICの血中濃度を添付文書どおり, 5-10μg/mLに設定すると多くのMRSA感染症例には無効とされており, TEICの用法・用量もしくは基準濃度域については再検証が必要である. MRSA縦隔炎に対しては, TDMを積極的に行い, TEICの血中トラフ濃度を≧20μg/mLに設定することが新たな治療手段の一つになると考えられた.

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