日本化学療法学会雑誌
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赤痢アメーバ症
源河 いくみ
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2006 年 54 巻 5 号 p. 435-439

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抄録

赤痢アメーバ症の病原体はEntamoeba histolyticaであり, 赤痢アメーバ嚢子に汚染された飲食物などの経口摂取により感染が成立し, 嚢子は胃を経て小腸に達し, そこで栄養型となり大腸に到達する。栄養型原虫は大腸粘膜面に潰瘍性病変を形成しアメーバ性大腸炎を起こす。さらに栄養型原虫は門脈を通り肝臓に達し肝膿瘍を形成する。感染者の多くは開発途上国に分布するが先進国では, 開発途上国からの帰国者, 知的障害者施設入所者, MSM (men who have sex with men) などに感染のリスクが高い。治療は, 肝膿瘍や腸炎などの侵襲性疾患の場合には, tissue agentとしてメトロニダゾールの投与を行う。通常治療後すみやかに臨床症状の改善をみとめる。その後にluminal agentとしてジロ酸ジロキサニドやパロモマイシンなどの非吸収性の抗嚢子薬を投与し腸管内に残っている嚢子を駆除し再発予防を行う。抗嚢子薬は現在, わが国では未承認薬であるが, 「熱帯病・寄生虫症に対する稀少疾病治療薬の輸入・保管・治療体制の開発研究」班より入手可能である。開発途上国からの帰国者やMSMの症例において, 粘血便, 下痢, 発熱などの症状がある場合には赤痢アメーバ症を疑い早期診断, 治療することが重要である。

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