日本化学療法学会雑誌
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基質特異性拡張型β-lactamase産生Escherichia coliに対する各種抗菌薬の抗菌力
村谷 哲郎小林 とも子後藤 令子和田 明子有馬 純徳大隈 雅紀薬師寺 博子小田原 ゆう子重高 正行大久保 孔平山田 陽司松本 哲朗
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2004 年 52 巻 10 号 p. 556-567

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抄録

1998~2004年までの間に九州・山口地区で分離された基質特異性拡張型β-lactamase (ESBL) 産生Escherichia coliのうち, 31施設133人から分離され, ESBLの構造遺伝一子まで決定された143株を用い, 各種薬剤の抗菌力を検討した。ESBLtypeの内訳は, UOE-2 (CTX-M-14, -18) type34, CTX-M-2type43, CTX-M-3type17, UOE.1 (CTX-M-15) type24, CTX-M-12type3, SHV-12type20, TEM type2株であった。UOE-2およびCTX-M-2type産生株に対しては, ceftazidime, cefepimeおよびaztreonamが, TEMおよびSHV typeに対してはcefotaxime, cefpiromeおよびcefepimeのMICが比較的低い値を示したが, cephalosporinsおよびpenicillinsのMICは高く, 特に経口薬のMICはそれぞれのbreakpoint MICと比較して高い値を示した。Carbapenemsの抗菌力が最も強く, meropenemは0.25, imipenem0.5μg//mLですべての株の発育を阻止した。8位にmethoxy基を有するcephamycinsの抗菌力も強く, latamoxefは8μg/mLで, flomoxefは4μg/mLですべての株の発育を阻止し, cefmetazoleは, 1株32μg/mLを示す株が存在したが, その他は, そのbreakpointMICである16μg/mLで発育を阻止した。β-lactamase阻害薬との合剤では, CTX-Mtypeに対しては, piperacillin/tazobactamが, TEMおよびSHVtypeではcefoperazone/sulbactamの抗菌力が強かった。Ampicillin/sulbactamおよびamoxicillin/clavulanicacidはそれぞれの単剤よりも明らかにMICは改善されたが, Breakpoint MIC以下とならない株が多数存在した。β-lactams以外では, quinolones, tetracycline, ST合剤およびgentamicinの感受性率は低く, minocyclineおよびfosfomycinはUOE-2 typeを除いて, 75%以上の感受性率を有していた。ESBL産生菌に有効な薬剤は限られており, また院内感染により拡がりやすい耐性菌であるため, 早期検出, 早期対策を行う必要がある重要な耐性菌である。

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