日本化学療法学会雑誌
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Faropenemを含む各種抗菌薬に対する臨床分離株の薬剤感受性調査
1998年~2003年市井感染症分離好気性菌に対する抗菌力
嶋田 甚五郎竹村 弘船橋 一照梶浦 泰一
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2003 年 51 巻 11 号 p. 680-692

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抄録

1998年より2003年にかけて, 毎年2月から3月に一次医療機関を中心とした日本各地の382施設において, 呼吸器または尿路感染症を主訴として来院した外来初診患者より採取された検体からの分離菌について, faropenem (FRPM) を含む各種抗菌薬の薬剤感受性を測定した。経年的に各種耐性菌の比率の変化をみると, Staphylococcus aureusに対するmethicillin-resistant S.aureus (MRSA) の比率は約7%と一定で, Staphylococcus epidermidisに対するmethicillin-resistant S.epidermidis (MRSE) の比率は42.9~58.3%と変動があるものの増加傾向はみられなかった。それに対して, Streptococcus pneumoniaeに対するpenicillin-resistant S.pneumoniae (PRSP) の比率は2.7%から19.1%へ, penicillin-intermediate S.pneumoniae (PISP) の比率は24.5%から32.1%へ経年的に増加する傾向を示した。Methicillin-susceptible S.aureus (MSSA), methicillin-susceptible S.epidermidis (MSSE), PISP, PRSPに対して優れた抗菌力を示したのはimipenem (IPM) とFRPMであった。Streptococcus pyogenesに対してはほとんどのβ-ラクタム系薬が優れた抗菌力を示したが, clarithromycin (CAM) の感受性は2002年以降1氏下した。Enterococcus faecalisに対して優れた抗菌力を示したのはclavulanic acid/amoxicillin (CVA/AMPC) であった。グラム陰性菌ではBranhamella catarrhalis, Escherichia coliにはlevofloxacin (LVFX), IPMが, Klebsiella属, Enterobacter属にはLVFXが優れた抗菌力を示した。Haemophilus influenzaeに対するβ-lactamase negativeampicillin-resistant H.influemae (BLNAR) の比率は9.6%から32.3%と著しく増加した。BLNARに対してcefditren (CDTR) を除くβ-ラクタム系薬で感受性の低下を認めたが, LVFXは優れた抗菌力を示した, FRPMはMRSA, MRSE, BLNARを除いた分離菌に対して全体的に優れた抗菌活性を示し, 6年間で特にFRPMに対する経年的な薬剤感受性の低下は認められなかった。

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