1994 年 42 巻 Supplement3 号 p. 303-309
Staphylococcus aureusを含むグラム陽性菌からPseudomonas aemgiuosaを含むグラム陰性菌まで幅広い抗菌スペクトルを有する新しい注射用セフェム剤FK037について, その体内動態を検討するとともに, 胆道感染症, 腹膜炎, 肛門周囲膿瘍に対する臨床効果を検討した。
1) 胆嚢摘出予定患者4例の術前にFK037 1gを60分間点滴静注した際の胆嚢組織内および胆嚢胆汁中濃度は, 投与開始1時間後にそれぞれ最高29.5μg/g, 14.5μg/mlであった。
2) 胆道ドレナージ施行6例にFK037 1gを60分間点滴静注した際の胆汁中濃度は, 投与開始2~3.5時間後に最高2.79~10.6μg/mlを示し, 特に腎機能障害患者にて高濃度で推移した。
3) 胃癌術後患者2例にFK037 1g60分間点滴静注した際の腹腔内浸出液中濃度は, 投与開始2~3.7時間後に最高値13.0~30.1μg/mlを示した。
4) 胆嚢炎1例および胆管炎3例, 汎発性腹膜炎3例および腹腔内膿瘍2例, 肛門周囲膿瘍1例の外科感染症10例にFK037 1gを1日2回 (肛門周囲膿瘍のみ1日1回), 4~12日間 (平均6.5日) 投与した結果, 効果判定が可能であった8例における臨床効果は著効4例, 有効4例であった。起炎菌としてはS.aureus3株, Escherichia coli3株, P.aemginosa1株, Bacteroides frtrgilts1株, 計8株が分離され, B.fragilisを除いて全て消失した。臨床検査値異常としてはGPTの軽度上昇を1例認めた。
以上より, FK037は外科感染症に有用な薬剤の1つであると考える。