CHEMOTHERAPY
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Temafloxacinの外科領域における基礎的・臨床的検討
由良 二郎品川 長夫石川 周真下 啓二鈴井 勝也石原 博保里 恵一鈴木 芳太郎三宅 孝久田 正純鈴木 一也中村 明茂鶴賀 信篤松本 一明長谷川 正光水野 章荻野 憲二松垣 啓司榊原 修岩井 昭彦水野 裕支大久保 憲
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1993 年 41 巻 Supplement5 号 p. 622-638

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抄録

新しく開発されたキノロン系経口抗菌剤であるtemafloxacinについて, 外科領域における基礎的・臨床的検討を行ない, 以下の成績を得た。
本剤はStaphylococcus aureusに対してofioxacin (OFLX), norfloxacin, ciprofloxacinと比較し最も優れた抗菌力を示し, methicillin-resistant S.aureusに対しても優れた抗菌力を示した。Escherichia coli, Klebsiella pneumoniaeに対しては, 他の薬剤と同等の極めて強抗菌力を示し耐性菌を認めなかった。Pseudomonas aeruginosaに対しては, OFLXと同等の抗菌力を示したが他の2剤より若干劣っていた。
本剤の胆汁中移行を臨床例3例について300mgの食後の経口投与にて検討した結果, 胆汁中のピーク値は9.65-15.2μg/mlを示し, 血中ピーク値の1.4-3.55μg/mlより極めて高い値を示し, 本剤も他のキノロン系薬剤と同様に高濃度胆汁中移行群と考えられた。
皮膚軟部組織感染症を主とする外科的感染症56例に本剤を使用し, その臨床効果は著効22例, 有効28例, やや有効4例, 無効2例で, 有効以上の有効率は89.3%と優れていた。本剤によると思われる自他覚的副作用としては1例 (1.8%) に心窩部痛を認めたのみであり, 又, 臨床検査値の変動においても, 2例 (4.7%) に軽度のトランスアミナーゼ値の上昇や白血球増多, 尿糖陽性化などを認めたが, 特に問題となるべきものは全例に認めなかった。
これらの成績より, 本剤は外科領域感染症の治療において極めて有用性の高い薬剤であると考えられた。

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© 社団法人日本化学療法学会
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