CHEMOTHERAPY
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茨城県におけるMRSA感染症の実態
茨城MRSA感染症研究会
長谷川 鎮雄吉澤 靖之中井 利昭澤畑 辰男村井 哲夫岩田 敏高橋 寛
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1991 年 39 巻 1 号 p. 49-58

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抄録

メチシリンに耐性を示すメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) の分離状況ならびに薬剤感受性分布と同感染症について茨城県内の実態把握とその治療について多施設間で検討した。全検体の5~17%がStaphylococcus aureusであり, うち51~82%がMRSAであった。総MRSA362株中, 薬剤感受性分布を調べたのは251株であり明らかなMRSA感染症は52例であった。52例中fosfomycin (FOM) とcefmetazole (CMZ) あるいはFOMとcefuzonam (CZON) で治療され治療効果の判定できる症例はそれぞれ18例, 7例であった。MRSA感染症例の内訳は気管支・肺炎を含む呼吸器感染症が18例, 尿路感染症が3例, 術後創感染1例, その他3例であった。治療の効果判定ではFOMとCMZで有効以上が88.9%, FOMとCZONで57.1%であり, 両者の間の症例数に差があるので有意差はみられなかった。FOMとCMZでFIC indexが1.0以上でも18例中4例に有効がみられる一方, FOMとCZONでFIC indexが1.0以下で7例中3例の無効例が認められており, FIC indexと同時に単独のMICの分布と血中到達濃度との関連も重要と考えられた。検索しえた251株についてのCMZ, CZON, minocycline (MINO), cefamandole (CMD), cephazolin (CEZ), およびimipenem/cilastatin (IPM/CS) の各抗生剤の単独およびFOMとの併用時のMICより算出したFIC indexでみるとCMZ 53.8%, CZON 66.9%, MINO 43.8%, CMD 61.8%, CEZ 62.9%, IPM/CS68.9%で相乗あるいは相加効果が観察された。一方, 各薬剤の常用量投与後3時間での血中濃度で発育を抑制される菌株の割合はCMZ単独で57%からFOM併用で82%, CZON単独で5%から併用41%, CMD単独6%から併用42%, CEZ単独12%から併用54%, IPM/CS単独20%から併用58%, MINO単独78%から併用84%となり, FOMとCMZの併用が最も治療域が広くなった。

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© 社団法人日本化学療法学会
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