CHEMOTHERAPY
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Vibrio cholerae non-01の薬剤感受性成績およびβ-lactamase基質特異性について
舘田 一博山口 恵三石井 良和下口 和矩草野 展周菅原 和行臼井 敏明河野 茂原 耕平
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1990 年 38 巻 5 号 p. 444-449

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抄録

Vibrio cholerae non-01は, いわゆるコレラ菌 (V.cholerae 01) と血清型においてのみ区別される菌種であり, 本邦の河川, 海洋に広く分布している。本菌のヒトにおける病原性は, コレラ菌感染症にみられる食中毒や感染性下痢症に加えて, 肝疾患等を有する患者においては敗血症の起炎菌としても重要であることが知られている。今風臨床分離株 (10株) および環境分離株 (80株) のV.cholerae non-01の薬剤感受性試験を行うとともに, 本菌の産生するβ-lactamaseの基質特異性について検討を加えた。今回検討した抗菌剤の中でceftizoximeとofloxacinの抗菌活性が最も優れており, すべての株が0.025μg/ml以下のMIC値を示した。また, 臨床分離株の中にはampicillin (ABPC) に対する耐性株は認めちれなかったものの, 環境分離株においては80株中30株 (37.5%) がABPCに対してMIC値12.5μg/ml以上の耐性を示した。そして, これらABPCに対して耐性を示した株のすべてがβ-lactamase産生株であった。そこで, β-lactamaseの基質特異性を測定したところ, V.cholerae non-01の産生するβ-lactamaseは構成型penicillinaseであることが明らかになった。今後, 環境におけるV. cholerae non-01の薬剤耐性株の推移に目を向けるとともに, これち耐性株の臨床への蔓延に注意していく必要があると考えられた。

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© 社団法人日本化学療法学会
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