CHEMOTHERAPY
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標識TA-058のマウス, ラットにおける体内動態
高橋 忠男仲村 進本田 正一針谷 祥一吉田 弘嗣佐久間 由光
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1984 年 32 巻 Supplement2 号 p. 133-151

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抄録

3Hまたは14C-TA-058筋注および静注時のマウス, ラットにおける体内動態を検酎し, 以下の結果を得た。
1) 3H-TA-058 (20mg/kg) 筋注後の血漿中放射能濃度の半減期はマウスで17分, ラットでは18分であった。
マウス, ラットとも組織内の放射能濃度は投与後15分に最高値を示し, 腎, 肝, 肺, 血漿などは高く, 脳は最も低かった。
14C-TA-058 (20mg/kg) 筋注時のラット組織内放射能分布は, 3H-TA-058筋注時のそれとほぼ類似していた。
2) 14C-TA-058 (20mg/kg) 静注時のラット組織内放射能分布の推移は, 筋注時とほぼ同様の結果が得られた。
3) 14C-TA-058静注後のマウスとラットの全身オートラジオゲラム (ARGM) では, 腎, 肝, 肺などの他, 皮下結合組織, 口腔および鼻腔粘膜にも高い濃度で放射能の分布が見られた。また, 全身ARGMで分布における雌雄差は認められなかった。
4) 3H-TA-058 (20mg/kg) をマウスおよびラットに筋注したとき, 72時間までの尿中に投与量の83および72%, 糞中には15および24%の放射能が排泄された。尿中放射能の大半はいずれも投与後4時間までに排泄された。
Bioassayによる排泄率は, 尿ではマウス, ラットともradioassayとほぼ一致したが, 糞では一致せず, 両者とも抗菌活性は認められなかった。
5) 14C-TA-058 (20mg/kg) をラットに静注または筋注したとき, 投与後72時間までの尿および糞中放射能排泄率は, それぞれ投与量の約70%および約28%であった。また, 尿, 糞中排泄率に雌雄差は認められなかった。
一方, 14C-TA-058筋注後24時間までのラット胆汁中放射能排泄率は投与量の約30%であり, 呼気中14CO2排泄率は僅か0.05%に過ぎなかった。6) 14C-TA--058筋注後6時間までのラット尿および胆汁中に排泄された未変化体, TA-058のpenicilloicacidおよびdimerの割合は, 尿ではそれぞれ94, 6, 2.1, 1.5%, 胆汁では82.1, 4.9および2.5%であった。
7) 妊娠後期のラットに14C-TA-058を筋注したとき, 投与後60分で極めて微量の放射能が胎仔にみられたが, 投与後8時間では検出限界以下の濃度となった。
8) 分娩後6日目の母獣ラットに14C-TA-058を筋注し, 6時間授乳時の乳汁移行性を検討したところ, 乳仔の胃内乳塊と腸内に母獣投与量の0.013%の放射能が移行した。しかし, 乳仔の肝, 肺, 腎などに放射能は検出されなかった。
9) 14C-TA-058 (50mg/kg/day) を6日間ラットに反復投与したとき, 組織内の放射能濃度は最終回投与後24時間で単回投与と比べて1.1~2倍程度にすぎず, 組織内に蓄積する傾向は認められなかった。

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© 社団法人日本化学療法学会
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