健康には遺伝要因,出生後の環境要因とともに,胎内環境が影響を及ぼすことが知られている。いわゆる Barker説である。これを明らかにしようとする疫学手法が出生コホート研究であり,エピジェネティクスの観察研究となる。 出生コホート研究にはいくつかの課題がある。まず,対象が発達過程の子どもであることから,臨界期,感受期などの概念を考慮してどのような解析モデルとするかが課題である。次に,脳科学に関連するアウトカムとなる健康事象について,身体測定のように縦断的に繰り返し測定できる方法の開発が課題であり,さらに,倫理的問題を含む研究ガバナンスは最も重要な課題である。 脳科学領域のコホート研究の戦略は,これまでの脳科学研究の知見から仮説検証すること,様々なモデルを構築してこれまでの知見との整合性を評価すること,逆に,コホート研究で得られた知見の機序を解明する基礎研究を行うことを通じて相互に補完しながら研究を展開することである。