1992 年 1992 巻 92 号 p. 67-74
本小論は,全国の過疎地域が1985年4月から1990年3月までの5年間に策定した「地域振興計画書」368件を基礎資料とし,とりわけ工業と観光に関する振興計画の記迷内容に注目しながら,(1)過疎地域開発計画の実態分析,(2)過疎地域開発計画にみられる「内発的」「外発的」地域計画志向の抽出,(3)「内発的」地域開発計画の特質と意義に関する考察などを行なったものである。主要な論点は,次のようである。(1)過疎地域における地域開発計画は,地域の各種資源を基礎としてその発展を志向する「内発的」志向と,当該地域外の資源に依存しながら発展を期そうとする「外発的」志向の二類型に大別される。(2)「内発的」開発計画への志向は,全国の過疎地塗に生起しつつある,工業化・近代化過程のなかで生じた各種の歪みへの内省,ならびに,自立自存の地域社会を再生していく必要性に関する認識の反映と考えられる。(3)「内発型」地域開発を志向する過疎地域においては,当該地域の「歴史的価値」「生産的価値」「人的価値」「環境的価値」の認識と発展を目指す実践が計画され,外部依存型の志向はほとんどみられない。(4)「内発的」地域開発を志向する過疎地域は全体の約2割に過ぎないが,その志向の歴史的意義は大きく,今後,その実効性を追跡・検証していくことが必要である。