生体医工学
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OCTを用いた手術用縫合糸のIn vivo時間経過観察
魏 鳳城中久保 日向近江 雅人
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2023 年 Annual61 巻 Proc 号 p. 361-363

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抄録

【背景・目的】現在、手術用縫合糸に関する研究は、主に材料物性、構造解析、In vitroシミュレーションとなる。In vivo実験の場合は、実験対象の脈動、撮影設備の低い分解能などの原因で、ほぼなされていない。しかし、In vivo実験の高い正確性はIn vitro実験が代われないことである。我々は高速、高分解能のメリットを持つ光コヒーレンストモグラフィ(OCT)技術を用いて、縫合糸のIn vivo実験を行った。【方法・対象】モルモット(Slc:Hartley 雌性 四週齢)とヌードラット(HWY/Slc 雄性 十週齢)それぞれ一匹使用し、背中に二箇所約1.5cm切開し、6-0号吸収性(PLA/PCL)、非吸収性(PVDF)縫合糸で約3.5mmの間隔で四針縫合した。その後、THORLABS TELESTO320型Spectral Domain OCTを用いて、週に一回、8週間の観察を行った。パラメータは648×415(X×Z axial)pixels, 両方向共に3.47μm/pixelである。【結果】繊維自身の屈折率の違いのため、非吸収性縫合糸に強い反射信号が現れ、皮膚組織に近い白色に見られる。吸収性縫合糸は空気に近い黒色に見られる。時間経過に伴い、両方共に組織増殖の部分が確認され、非吸収性縫合糸における増殖部分は主に角質細胞と推測される。吸収性縫合糸の場合は時間経過に伴い、色褪せることを確認した上、増殖部分には乳酸単体や染料など、縫合糸の分解物も存在する。繊維の非晶質も増えて、光を反射させたため、屈折率が一部向上し、強い反射信号が見られた。

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© 2023 社団法人日本生体医工学会
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