生体医工学
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仮想脳血管形状群の生成:多変量正規性を用いたアプローチ
神 容慶北村 洸麦倉 俊司森 奈緒子太田 信安西 眸
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2023 年 Annual61 巻 Abstract 号 p. 218_1

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抄録

大量の実患者血管形状群(RP)を得ることは難しいことから,RPの解剖学的特徴と解剖学的多様性を再現した仮想血管群(VP)を生成する手法の開発が望まれている.多変量正規分布法(MVND法)は疫学的な多変量カテゴリデータを共変量として多変量正規分布を仮定し,VPを生成する手法として提案されたが,血管形状には未適用であった.血管形状には特有の解剖学的特徴,多様性があることに着目することで,血管走行情報を共変量とし,MVND法を適用できる可能性がある.そこで本研究では,血管形状に対してMVND法を適用し,VPを生成する手法を提案する.MRA画像から得られた脳血管中心線データ(脳底動脈,左,右内頚動脈)を使用した.血管中心線を構成するランドマーク点群(N点)の三次元座標 (x,y,z) と内径dを共変量として,MVND法によりデータ拡張を行った.Nを変化させ,各条件下で100人分のVPを生成した.得られたVPの解剖学的特徴,多様性を視認による定性評価及び,長さや屈曲度,曲率の幾何特徴を計算し,コルモゴロフ=スミノルフテスト(KS-test)によりRPとの幾何特徴分布の適合度の定量評価を行った.血管形状データの可視化より,RPに似た形状を持つVPの生成が確認できた.適合度は,Nを増加させていくにつれて上昇した.これは,Nの増加が解剖学的特徴と多様性の再現に寄与するからであると考えられる.よって,各血管に対し十分数のN設定することで,MVND法によりVP生成が可能であることが示された.

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© 2023 社団法人日本生体医工学会
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