生体医工学
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VA下流の流れ状態を定量化した流体パラメータと血液透析患者のシャント音の音響特性との関係
佐々木 一真神林 舞細川 柚乃中根 紀章奥 知子本橋 由香山内 忍佐藤 敏夫
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2023 年 Annual61 巻 Abstract 号 p. 168_2

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抄録

【目的】血液透析患者のVAで発生するシャント音を電子聴診器で採取し、時間-周波数解析によって得られる周波数領域の経時変化を表す正規化相互相関係数RからVA機能を客観的に評価する方法を提案している。今回は、狭窄形状や狭窄数の異なる病変を有するAVFモデルで擬似シャント音を測定・分析するとともに、粒子画像流速測定法による流れの可視化から、狭窄形状の違いがシャント音の音響特性に与える影響について実験的に調査した。【方法】動静脈吻合部下流に径狭窄率と長さの異なる狭窄パーツを挿入したAVFモデルを作製し、多機能型脈動ポンプで拍動流を流した。狭窄下流で擬似シャント音を測定し、Rを求めた。また、微小粒子を添加した水をモデル内に流し、高速度カメラで撮影・記録した狭窄下流における2次元断面の粒子の動きを解析した。【結果と考察】渦流や乱流の発生を定量的に求めたところ、径狭窄率が30%以下の狭窄下流の流れは層流で、RはVA機能良好時と同じ水準を維持していた。その一方で、径狭窄率が50%を超えると径狭窄率の上昇に伴って乱流の程度を表す流体パラメータも顕著に増加し、Rが大きく低下した。今回の結果から、シャント音の音響特性には血管内の流れが大きく影響しており、径狭窄率とR、乱流を定量化する流体パラメータとの関係からシャント音の発生メカニズムを明らかにできる可能性が示唆された。

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© 2023 社団法人日本生体医工学会
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