2023 年 Annual61 巻 Abstract 号 p. 162_1
超高齢化社会の進展に伴い、老化のメカニズムの基礎科学的理解や、老化細胞を標的とした治療を目指す研究が盛んに行われている。培養線維芽細胞は継代を繰り返すだけで老化が進むことが知られており、しばしば老化研究のモデルとして利用されている。我々はこの老化細胞モデルおよび特殊なアッセイ系を組み合わせて、アクチン細胞骨格構造(stress fiber)の構成タンパク質がどのように変化するかを調べてきた(Liu et al., Molecular Biology of the Cell 33, ar10, 1-11, 2022)。特にプロテオーム解析を用いて、stress fiberは少なくても135種類のタンパク質から構成され、そのうち老化に伴い63種類のタンパク質の発現量が変化することを明らかにした。本発表ではそのアッセイ系を用いたプロテオーム解析について紹介をするとともに、そのうちの特定のタンパク質に着目し、その分子の発現調節を行うことによって細胞の老化を促進もしくは抑制させることができるという我々の新しい発見について述べる。さらに、その老化調節の分子的機構について明らかにしていることを紹介して同アッセイ系の有効性を示す。