2021 年 Annual59 巻 Abstract 号 p. 486
事象関連電位(ERP)の検査では,多数回の標的刺激に対する応答の加算平均により背景脳波やアーチファクトを抑制することでERPが推定される.しかし、加算に用いる応答数を増やすことで,EPR以外の成分の抑制効果が高くなる一方、計測時間が長くなることで被験者の精神的,肉体的負担が増加する.そこで、本研究では深層学習ネットワークの一つであるEEGNetを用いて,計測時間の短縮を目指す。ここでは、入力が標的刺激の応答に対して1,非標的刺激の応答に対して0を出力するように学習を行うことで,出力値を用いて応答に対する加重平均処理を行う。すなわち、出力値は標的刺激に対する応答としての信頼度であると捉え、ERPが顕著に出現している良好な応答に大きな加重を与え,逆にERPが不明瞭な応答に対して小さな加重を与える。よって、アーチファクト等の影響が大きい応答やERPが顕著に出現していない応答に対する加算平均への寄与を低下させ、従来よりも少数の応答でERPの推定ができると考えられる。結果として、従来の加算平均法で得られた波形と比較し、波形形状やERPで代表的な成分であるP300の頂点潜時を維持しつつ、13%少ない応答数で14%振幅の大きなP300振幅を得ることができた。