2021 年 Annual59 巻 Abstract 号 p. 246
新型コロナ感染症拡大は、従前から国家的社会課題であったうつ病や自殺などを増加させており、その脳科学に基づく治療法開発は喫緊の課題である。近年、fMRIなど脳機能解析研究により、うつ病の神経回路異常などの病態解明が進んでいる。演者らはうつ病患者のfMRI脳機能解析から、意欲低下に関連する背外側前頭前野(DLPFC)の機能低下、反芻症状(くよくよと反復考える)に関連する後部帯状回(PCC)の機能亢進を認め、これが抗うつ薬(SSRI)治療によって改善すること、およびDLPFC-PCCの機能的結合がうつ病のバイオマーカー候補となることを報告した。一方、DLPFCとPCCの機能が拮抗関係にあることに注目し、DLPFCを標的とするfMRIニューロフィードバック(NF)によりその活動を上昇させることで、PCC機能を抑制し、抗うつ作用があるかを調べるために探索的臨床試験を行った。その結果、抑うつ症状や反芻症状などが改善され、うつ病の非薬物治療法となりうることを示唆した。次に、より簡便で実用化可能なうつ病のNF治療開発のために、健常人を対象に、DLPFCを標的とするfNIRS-NFを行い、抑うつスコア(BDI)、反芻スコア(RRQ)の改善度、安全性およびNIRS-NF前後のfMRIによる脳機能変化を解析した。本セッションではこれらの研究成果を紹介するとともにfNIRSの将来展望について私見を述べる。