2021 年 Annual59 巻 Abstract 号 p. 238
【背景】IPVは高速のジェット気流を高頻度で噴出する人工呼吸器の一種で1980年代にBirdによって開発された。近年は排痰補助装置として臨床的な有用性が認められているが、そのメカニズムはよくわかっていない。【方法】マウスピースを介して流出入する気流量を外付けの流量計(CITREX H5、 IMI社)で計測した。Kitaokaの4D肺モデルの口腔端から当該気流量を与えたときの流速分布を計算流体力学を用いて算出した(使用ソルバ:AcuSolve、Altair社製)。【結果】口腔端から流入したジェット気流は喉頭腔を経て気管に流入するまでに高速域が消失し、通常の吸気流と同様の流速分布になった。気管壁に沿った逆向きの流れは生じなかった。呼気流においては気道分岐の影響で、吸気流の分布とは全く異なる流速分布になった。このことが末梢気道から口側に向けて異物が輸送されるメカニズムの一つと考えられたが、IPVに特有ではない。IPVが他の高頻度換気と異なる点は、ジェット噴出中に呼気弁が閉鎖することであり、健常ボランティアの呼息中に呼気流が断続することを実測にて確かめた。【結論】装着者の呼息中に高頻度の微小咳嗽と類似の状態が外力によって生成され、数分間持続することで、肺末梢部の分泌物が中枢まで移動しうると考えられた。気流量をモニタして設定モードを調整することで、より効果的かつ安全な気道クリアランスが実現すると期待される。