生体医工学
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心筋細胞のメカノストレス応答を解明する顕微鏡下細胞伸展システム
稲村 駿季小泉 彩芽野村 征太郎伊藤 正道横田 祐子小室 一成池内 真志
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2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 342

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抄録

心臓への血行力学的な負荷(メカニカルストレス) の増加は心肥大を引き起こし, 心不全へと発展していく. しかし, 心不全へと至るメカノバイオロジー機構にはいまだ不明な点が多い.これを解明する方法として, 正常iPS 心筋細胞とラミン変異iPS 心筋細胞のメカニカルストレス応答を比較することが考えられる. そして, ラミン変異を有する患者は激しい運動を契機として心不全を発症する場合があることから, メカニカルストレス応答が負荷の大きさによって異なることが想定される. さらに, メカニカルストレス応答を解析するにあたり, 細胞への負荷や形態の履歴をリアルタイムに記録し, その情報を伸展後の発現解析の情報などと紐づけて解析していくことは有用であるといえる. そこで, 本研究ではマルチ伸展パターンとリアルタイム観察を両立する細胞伸展システムの開発を行った. そして, ウェルの幅と伸展量の組み合わせによって4-12% の範囲の伸展率を同時に達成した. さらにウェルに滴下した蛍光マイクロビーズの観察によって倍率40x までリアルタイム観察が可能であることを実証した. そして,iPS 心筋細胞が伸展に対し接着を維持可能な最適条件を検証し, 播種後3 日目にフィブロネクチンコートでFBS を含まない培地を使用すると最も接着が維持される割合が高いことを確認した.

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© 2020 社団法人日本生体医工学会
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