生体医工学
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薬物の濃度と作用を生体内の局所でリアルタイム計測する新技術
日比野 浩緒方 元気浅井 開楠原 洋之栄長 泰明
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2019 年 Annual57 巻 Abstract 号 p. S222_2

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抄録

薬物は体に投与されると、各臓器で時空間的に不均一に増減する。それに伴い、薬物標的となる細胞集団の活動も変化していく。これらの局所の薬物の動態と作用の推移は、薬効や毒性の発現に深く関わるはずだが、その計測は従来法では困難である。本研究では、新たな薬物モニタリングシステムを開発した。この系は、最先端の「導電性ダイヤモンド」を加工した針状の薬物センサと、細胞の電気現象を捉えるガラス微小電極センサを搭載する。まず、ブメタニドを試した。この利尿薬は、内耳の電位環境を破綻し、難聴を誘引する。2本のセンサを同時に内耳へ挿入した。ブメタニドを動物に静注すると、迅速なブメタニドの濃度上昇と、それに少し遅延して内耳電位の降下が観察された。次に、センサを脳に配置し、抗てんかん薬ラモトリギンを試した。薬を投与すると、その濃度は緩徐に上昇した。神経活動を示す細胞外電位は、薬物濃度の上昇開始とともに強く抑制された。抗がん剤ドキソルビシンも、生体内でモニタリング可能であった。本研究で創出した技術は、多彩な薬物や臓器に適用可能であり、副作用を抑えて効果を最大にする薬物投与法や、安心・安全な創薬を発展させる。

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© 2019 社団法人日本生体医工学会
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