生体医工学
Online ISSN : 1881-4379
Print ISSN : 1347-443X
ISSN-L : 1347-443X
低温環境下での輸液温の変化-生理食塩水と酢酸リンゲル液の違い-
堀田 蛍菅原 俊継大西 新介山下 政司清水 久恵
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 478

詳細
抄録

ドクターヘリやドクターカーなどの普及によりプレホスピタル診療が増加しており、外傷患者を屋外で診療する機会が増えている。外傷患者の場合、循環血液量が減少するため、輸液が必要となることがある。また、循環血液量の減少に伴い低体温に陥りやすく、血液凝固障害を悪化させることから、輸液を加温することが推奨されている。昨冬、道内においてドクターヘリによる外傷患者の救助活動中、屋外気温が-10℃以下という低温環境下で輸液が試みられ、チューブ内で輸液が凍った経験をした。そこで本研究では、低温環境下で輸液温がどの程度低下するのかを調べ、輸液温の低下の防止策を検討することとした。本報告では、北海道の冬季の屋外で輸液を行うことを想定して、0℃以下に保たれた実験室で40℃に加温した生理食塩水、酢酸リンゲル液を用いて10分間の輸液を行い、輸液温の時間変化を測定した。このとき、チューブ内を流れる輸液の温度を、輸液チューブの患者接続部内側に挿入した熱電対で1分毎に測定した。その結果、輸液温は時間経過に伴って低下し、10分後には屋外気温に近づくことが分かった(温度差0.2~1.2℃)。10分後の輸液バックの温度を測定すると30℃以上を保っていた。輸液はチューブ内で冷やされてしまい、患者の体内へ送られるまで加温した温度が保たれていないことが示されたため、輸液チューブの加温または保温が必要であると考えられた。

著者関連情報
© 2020 社団法人日本生体医工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top